設立趣意書

2020年7月に「アカデミア看護研究会」を発足いたしました。

この研究会の「アカデミア」の語源は、皆さんご存知のソクラテスの弟子であるプラトンが「真理を共に考え、本来の姿を取り戻すこと」を目的として創設した学園の名前を「アカデミア」(アカデメイア)と名付けたところから、現在は教育研究機関や大学などを指す言葉として使われている言葉です。では、なぜ、この「アカデミア」という言葉を使ったのでしょう。

看護は医療・介護・保健・福祉、そのすべてにおいて深くかかわりながら、人々の幸せを支援する素晴らしい職業であると考えています。看護師は、矜持に基づく、国家資格をもった科学者として、時に、社会的な視点では許されないことも、信頼関係に基づき実践の中では展開していくことも許されるほど、人々の命と人生にかかわるとても専門性をもった職業です。

求められる役割は、患者さんやその家族に終わらず、地域包括ケアシステムの下、地域住民すべてを対象としており、多岐にわたります。その役割を遂行しながら、多職種と連携し、人々の人生の幸福(以降well-beingと記す)追求を支援する看護師ですが、昨今のCOVID-19の影響により、疲弊感や自身のwell-beingさえをも見失っている看護師もいます。しかし、そのような状況においても、なお、患者のためにもっと良い方法はないだろうか、もっといい看護はないだろうか、と飽くなき探究心を持ち続けている看護師が実に多いことをとても誇りに思います。

そこで、これまで、ずっと、臨床の看護師たちが、もっといい看護をしたい、学びたい、研究したい、という気持ちをもっと身近に支援できる機会はないだろかと考えました。確かに大学院の修士課程、博士課程に進むことも一考です。しかし、やはり臨床に身を置いておきたいという看護師が多いのも事実であり、であれば、気軽に「もっと素敵な看護を追究したい!看護の真理を究めたい!」という日常的な思いを、楽しみながら、気軽に参加できる、しかもアカデミックな環境とも繋がれる、そのような研究会を発足したい、ということで、看護の真理を探究しつつ、看護師たちの飽くなき向上心を支援する、そんな研究会を発足するに至りました。そうです、「アカデミア」という真理の探究、つまり看護の探究、飽くなき向上心を持つ看護師はプラトンの血を受け継いでいるのかもしれません!

本研究会の願いは、人々のwell-being支援をする看護師自身が、日常の看護業務に忙殺されることなく、「あ~看護師って本当に素晴らしい素敵な職業だな~」っと感じていただけるような「場」になることです。飽くなき向上心を満たしながら、看護の真理を探究し、本質的な看護の魅力をとり戻すために、その探求心へインスパイアできれば幸甚に存じます。

願わくば、活動の延長上として、実際に臨床現場に役立つ研究も進め、実装の場を広く提供していただける仲間たちと共に、臨床現場の研究支援も考え、学術研究も包含しつつ、産業界との交流・協働をはじめ、人材育成のための様々な仕掛けにも積極的に取り組みたいと考えております。今後は賛助会員としてご賛同いただける企業様から研究支援もいただけるような、更なるアカデミックな活動と共に、多角的な視点からの情報発信や新たな看護の知見などの発信することをめざします。

本研究会への入会資格等の制限は特にありません。多くの方々の参加をお待ちしております。

2020年7月3日

アカデミア看護研究会 会長

東京医療保健大学・大学院  中島 美津子